衛生学的研究の報告

 衛生学的研究の報告書銅は健康の保持に必要欠くべからざるものであり、動植物および人間の健康・生命に重要な役割を果たしています。

 これについて元東京大学医学部教授豊川行平氏がまとめた「銅の衛生学的研究」の研究結果を要約しまとめてみました。

  1. 銅は広く動植物に存在し、しかもそれが生物学的に重要な役割を演じていることが明らかになっている。
  2. われわれの口にする食品には多かれ少なかれ銅が含まれており、銅を含まない食品はない。1kg当りの量を見ると、最も多いのはココアで8.34mg、穀類は平均4.7mg、魚類は平均2.5mg、野菜類の平均は1.2mgである。
  3. 普通われわれが飲食物から摂っている一日の銅量は最高で約5mgである。しかしすべて吸収されるわけではなく、未吸収のままのものや一度吸収され排出されるものもある。
  4. 銅は、直接結合はしないが、ヘモグロビンの形成、赤血球の生産、健全な血液のために、化学でいう触媒のような働きをする。
  5. 銅が不足すると、人は貧血症状を起こしたり、動物は骨が脆くなり骨折しやすくなったり、運動機能障害や毛の脱色などいろいろな病気を起す。
  6. われわれにとって必要な銅は、成人で一日に1~4mg、子供では1~2mgといわれる。
  7. 銅塩は胃の粘液の局部刺激によって嘔吐を起こす特異な作用があり、人では硫酸銅0.02~0.05gでこの作用が現れる。吐剤として用いる場合の常用量は0.2~0.3gで普通1%水溶液を使用する。
  8. 銅の中毒量はその溶解度に関係があり、金属銅は無害である。銅は鉄、鉛、アルミニウムなど多くの金属と同様にわずかであるが水に溶け、水温の上昇につれて溶解量も少しずつ増加する。しかし最も多く溶けた場合でも0.15mg/lぐらいのわずかな量である。
  9. 緑青はほとんど水に溶けない。水に浸し、水温を上げて溶出試験をしたが溶けた銅分はきれいな銅の場合と同じか、むしろ少ないことがわかった。
  10. 緑青その他の銅塩による長期動物実験の結果から、銅塩は成分にかかわらず、猛毒ということは間違いであることが判明した。
  11. 動物による銅の長期投与実験の結果を人体に換算すると、体重60kgの人で130~140mgぐらいの量なら毎日銅を摂ってもさほどの影響はないと推定される。
  12. 銅工場において長期にわたり銅の粉塵やフュームを比較的多量にあびる人々を選び、各種の衛生学的調査を行ったが、現在の銅工場ではわれわれが危惧するような影響は認められなかった(工場の調査結果 PDF形式)。

 以上のことから銅は日常生活では無害であり、万一かなりの量の銅が人体に投与された場合でも、人体の耐性はかなり高く、また排泄も比較的に速いので安全と考えられる。

 少量の銅は人体に蓄積されることなく、自然に排出される。また銅あるいはその合金と長期間にわたり接触する人々に銅に起因する職業的疾患はまったく見られない。また、人間は銅とその合金を装飾品、家具、調理器具および外科機器として、幾世紀にもわたって使用し今日に至っているが、なんらの障害をも受けていないのである。

 銅はほとんど全ての土壌と植物から検出され、また実に全ての動物および人間の主要な臓器および血液中に見出される。そして銅は地球上における生命の複雑な機能にとって最も本質的な因子と考えられ、すべての植物と動物の生命の健康とその固有の機能にとって重要なものであり、もし銅が植物や動物および人間に欠如した場合には、補給をする必要がある。したがって銅は植物および動物の栄養素として、また人間の微量必須元素として重要な役割を持つものである。つまり銅は有毒であるというよりも、むしろ生命にとって必要なものであり、欠くことのできない要素の一つである。

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