IH炊飯器にも銅が使われています

 ごはんは、日本の食の基本。かまどで炊く時代から伝わる飯炊きの知恵は、現在の炊飯器にも生かされています。2000年に発売されて以来、ヒット商品となっている「IH炊飯器」に、その工夫が見てとれ、そしてそこでも銅が活躍しているのです。

 ご飯を炊く工程を表した言葉で「はじめチョロチョロ、中パッパ、赤子泣くともフタとるな」という言葉がありますが、おいしいご飯を炊くにはこの中の「中パッパ」がとても重要になります。

 IH炊飯器でおいしいご飯を炊くには、やはり「中パッパ」がとても重要になります。つまり一気に高温で炊き上げる部分です。昇温に勢いがあればあるほど、ごはんはしゃっきり炊き上がります。IH炊飯器というだけで、この部分は従来の炊飯器に比べかなり向上するのですが、さらにおいしいごはんをつくるため、従来のIH炊飯器を超える強火を求めたのが、松下電器産業株式会社でした。

 そもそもIH炊飯器というのは、釜のまわりに配置した銅コイルに電流を流すことで磁力線を発生させ、釜に渦電流を起こすことで、一気に高温発熱させるシステム。ですから、釜には磁力を通しやすい素材が求められます。

 電気や熱を伝えやすい性質から、銅であればさらに十分な発熱が見込めますが、銅は磁力を通しにくいため、釜には適さないとされていました。ところが、同社のアイデアは意外なところにありました。すなわち「銅は電気抵抗が低いけれど、箔のように薄くしたら・・・」というもの。ヒントになったのは奈良の薬師寺にある、薬師如来像の金箔だったそうです。

 実験の結果、導き出された最適の薄さは5マイクロメートル。この箔とステンレス、アルミの材料を組み合わせて、さらにハイパワーな炊飯器が誕生したのです。

 実用化にあたっては、いくつかのこえなければならないハードルがありました。その一つが「めっき」の問題。5マイクロメートルという薄さですから、釜をプレス成形するときにめっきがはがれてしまいます。めっきをプレス後に行えばいいのですが、それでは工程がかさみます。そこで、特別な下地処理を施し、これによってめっきの密着性を高めることに成功しています。

 また釜の内側には、ごはんをくっつきにくくするふっ素樹脂コートを施しますが、これを通常の400度で焼き付けてしまうと、お釜が焦げてしまいます。せっかくの美しい銅釜の見た目が台なしですから、ここにも工夫が必要でした。「無酸素焼成」という方法を用いることで解決しましたが、この技術はなかなか他社ではまねのできないものなのだそうです。

 銅にこだわったのには、もう一つ理由があります。

 それは、銅のもつあたたかさです。加熱調理器具にぴったりの赤い色。高級なイメージを与えるため、発売前にあらかじめ行った主婦へのアンケート結果でも、大変な好印象が得られたそうです。店頭で、お客様は釜をよく見ます。そのときステンレスは冷たい感じがしますが、銅は赤くあたたかいイメージがあり、さらに宝飾品のように美しい。この商品はここまでこだわって作られた商品なのです。

 新商品には、釜の内側にさらにダイヤモンド微粒子をコーティング。細かい泡の熱対流を多数発生させ、ごはん一粒一粒にしっかり熱を伝えることが出来るようになっています。

 名テニスプレーヤー・沢松奈生子さんも絶賛しており、「おいしいごはんが食べたい」と奮発して買ってみたら味が格別に違うという。あまりにおいしいので友達の結婚祝いには決まってプレゼントしているそうです。

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