「お風呂の水が青くて気持ち悪いの。緑青がついた銅管から青い水が出ているのかしら」給水管や給湯管に銅管を使った家庭から、こんな問い合わせがくることがあります。確かに水道から青い水がでてきたら不気味ですね。危険なものではないか警戒する気持ちはわかります。でも、ご安心を。それは海の水が青く見えるのと同じ、光の反射によるものなのです。
白や透明に見える太陽の光は、実は「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」の七色の光が混ざり合っています。そのうち、赤や黄色などの色は海の中に吸収されて見えなくなってしまいます。しかし、青の光は海の水に吸収されずにいろいろな方向に散らばり、その光が目に入るため、海の水は青く見えるのです。
お風呂などの水が青く見えるのもこれと同じ原理です。つまり、青い水の正体は、ほとんどが目の錯覚や思い込みだといえます。
実際に「青い水が出ている」という苦情があったお宅を訪ね、水道水を調べてみました。ガラスのコップに水を汲んで見ると、無色透明です。じつはこれは当然のことで、肉眼で水道水が青く見えるのは少なくとも1リットルあたり数十ミリグラム以上の銅が溶け込んでいる場合です。実際にはありえない数字です。
水道水は世界各国でそれぞれの基準が定められており、日本では銅イオンの濃度は1リットルあたり1.0ミリグラム以下と定められています。しかし、ほとんどの水道水はその100分の1くらい、銅の給水管を使ってもせいぜい0.1ミリグラムの銅を含む程度です。
この水を1リットル飲むとすると、0.1ミリグラムの銅を摂取することになりますが、これは食物から一日に摂取する銅の量の20分の1~50分の1ほどにすぎません。
また、浴槽やタイル、洗面器につく青色の汚れが、青い水が流れていると誤解される原因になることがあります。
銅の給水、給湯管を使う家庭では、時々浴槽などが部分的に青くなることがあります。この汚れの正体は、水中に溶け出した銅イオンが石鹸や垢に含まれる脂肪酸などと反応して生じる銅石鹸です。
このような汚れは水まわりを清潔にしていれば防ぐことができますが、もしもついてしまったら、早い段階で家庭用洗剤をつけたスポンジでこすれば落とすことが出来ます。
蛇口下のタイルの目地や洗面器に青色の汚れがつくこともあります。使用頻度の少ない蛇口から少量の水滴が落ちる状態が長く続くと、水滴が自然に蒸発し、含まれているわずかな銅イオンが濃縮されて銅塩が生成されてしまうためです。
蛇口の下が青くなっていれば、まるで常に青い水が出ているように感じてしまうのも無理はありません。このような思い込みと、もともと水が青色に見える性質から「青い水」といわれるようになってしまったのです。
配管材に銅管でなく鋼管が使われている場合、同じような条件では、タイルが茶色に染まることがあります。いわゆる赤錆です。日本ではどういうわけか、赤錆には関心がないのに、銅の青色にはアレルギー反応をもつ人が多いようです。やはり緑青が毒だというイメージが残っているのでしょう。
ちなみに、アメリカやヨーロッパはまったく逆で、鉄の錆を嫌うようです。東京オリンピック開催時に建築された東京の国際的なホテルは、当初鋼管を採用していました。しかし、数年で給湯水が錆によって茶褐色になり、海外からの宿泊客が敬遠したため、その後すべて銅管に取り替えたといいます。
「所変われば品変わる」生活環境や習慣の違いで、配管材や水道水に対するイメージも違うものですね。
お風呂の水が青く見えるのは海が青く見えるのと同じこと、一般的な水道水が肉眼で青く見えることはほとんどないこと、おわかりいただけたでしょうか。銅管を使っているお宅では青い水に神経質にならず、水まわりの掃除を徹底しましょう。