銅の表面は赤褐色の美しい色をしているが、これを大気中に雨露に当たるように放置しておくと、酸素、炭酸ガス(二酸化炭素)、水分が作用して緑色の皮膜を生じる。この皮膜は時がたつに従って、しだいに厚くなり銅板屋根の場合普通の状態で20~30年位でその表面全体が緑色に被われるようになる。

 これが緑青といわれるもので、主成分は塩基性炭酸銅といわれる化合物で銅のサビの一種である。この緑青は水、酸、アンモニア水などには不溶で、銅の表面に固く付着して内部の銅が腐食されることを防ぐ働きをしている。

 緑青は水、弱酸には溶けず、日本薬局方にも記載されていない。日本薬局方に記載されている硫酸銅を例に上げてみると、硫酸銅の項には、「常用量一回20mg一日60mg(増血)一回0.2g一日0.6g(吐剤)極量一回1.0g」と記載されており、これは一回に1gまでは使用してもよいことを示している。また、乾燥硫酸鉄は同じく「常用量一日0.3~0.6g」であるので、常用量からいうと硫酸銅と硫酸鉄はほぼ同一であるということができる。

 元東京大学医学部豊川行平教授の「銅の衛生学的研究」によると、各種銅化合物の50%致死量(LD50)はそれぞれの化合物により大差なく、硫酸銅と緑青とは同じ程度の毒性を有すると思われる。この場合、銅化合物のLD50はおおむね0.2g/kg前後である。

 このLD50の0.2g/kgという数字は他の重金属のそれと比べあまり差のない数字であることから銅が他の重金属よりとくに有害であるということはない。つぎに普通我々が毎日摂っている銅量は、飲料水から摂ったとして水道法水質基準の規制値1mg/lの水を2.0l、これと同量の銅分を食物から摂ったとして、2mg/日でこれの500倍で極量の1gに相当し、このような事は実際にはあり得ないのである。では誤って硫酸銅の塊りを食べた場合はどうだろうか。人間には嘔吐作用があり、一回に0.2gの硫酸銅は吐剤として利用されているわけであるからこれ以上の硫酸銅は、嘔吐して対外の出されてしまう。したがって多量の硫酸銅を服用して、それが体内に取入ることはないのである。

注釈:極量(きょくりょう)とは、「劇薬・毒薬について大人に対する一日分又は一回分の制限量」のことをいう。

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