東京大学医学部による緑青の動物実験について

 緑青が人体に害があるかどうかの動物実験が、東京大学医学部で実施されましたが、この実験で「緑青は有毒」は、誤解であることが科学的に実証されました。この実験では400匹のマウスに緑青や硫酸銅が400ppmと1000ppm含まれた飼料を寿命である約2年半の間与え続け、成長ぐあいや生殖への影響、臓器への銅の蓄積などが調べられました。

 そしてマウスの健康状態を調べたところ、成長具合や寿命に影響を及ぼすこともなく、内臓にもまったく異常が見られませんでした。

 結果を簡単に記しますと、成長率、生存率、妊娠・出産などへの障害はなく、銅添加の影響はまったく観察されませんでした。ただ1000ppm群では、肝臓への銅の蓄積が見られ、軽い肝臓の線維化が認められました。400ppm群では銅の蓄積は見られず、このくらいの濃度では、吸収や排泄の段階における調整機能が働き、体内の銅レベルを一定に保つ作用が十分にはたらいていると考えられます。

 400ppmという濃度は、食品の中でも銅を多く含むレバーやナッツなどのなんと、50~100倍の銅含有量です。1000ppmともなれば、日常では考えられないような高濃度となります。つまり日常では銅による害は無いと考えても大丈夫なのです。

 ちなみに、人間においての慢性影響はあるのでしょうか。これまでに、口から入った銅によって慢性中毒を起こしたという明らかな事例は知られていません。ラットや豚などの例から考えて、通常の摂取量(2~5ミリグラム/日)の10倍程度の銅をとっても健康への影響はほとんど無いだろうと考えられています。

 通常、ある化学物質の影響を真っ先にうけるのは、職業としてその物質を扱う人々です。一般の人々よりその物質にさらされる機会がずっと多いからです。銅工場において長期間、銅の粉じんなどを比較的多量にあびる人々に対して、各種の調査が行われました。

 その結果、血液や肝臓の銅濃度は正常で、障害を示す検査結果は何ひとつなく、長期間にわたり接触する人々に、銅による疾患は見られませんでした(工場の調査結果 PDF形式)。

 逆に人間の体に良い影響があったという報告があります。フィンランドの銅鉱山では、働く人に関節炎が非常に少なく、怪我をしても化膿しにくかったそうです。これは銅の抗炎症作用が働いたと考えられます。

 また、国内の銅関係者がよく口にするのは「銅工場ではたらく人に水虫の人がいない」という話です。これは最近注目を浴びている効果で、銅の抗菌作用が働いている証拠です。現在はこの作用に注目した銅繊維を入れた水虫対策グッズや抗菌靴下が発売されています。

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