医療器具に銅が使われ始めたのは、なんと古代エジプト時代。今から3000年も前に、すでに青銅製のナイフ、ペンチ、鉗子(かんし)、ピンセットなどが使われていたようです。このような銅製の医療器具は近代になっても利用されています。
最近では少なくなってしまいましたが、メス、消毒盤、舌押え、のう盆、洗眼容器などの材料には銅や黄銅、洋白などの銅合金が使われていました。医療器具に銅が使われた理由は主に錆びにくいこと、加工しやすいことだったようですが、銅の抗菌効果によって器具が衛生的に保たれることも利点の一つだったのではないかと思われます。
銅の抗菌効果が生かされている医療器具に、身動きがとれない患者さんの排尿に使われる「尿道カテーテル」があります。カテーテルは、尿道から膀胱まで差し込んで使うため、身体に細菌が入り込み、感染症が起きやすいのが問題です。そのため一部のカテーテルは、細菌の入りやすい箇所に銅を使い、細菌をブロックしているのです。
そのほかにも、子宮内避妊具(IUD)に部分的に銅を使ったものもあります。IUDは子宮内に装着して受精卵の着床を抑える器具で、T字形や杉の葉形のプラスチック製のものが多く使われています。海外では、これに細い銅線を巻いたものが避妊効果がより高いことが認められているそうです。
さて、医療の分野で活躍するさまざまな銅の姿、いかがだったでしょうか。今医療器具の多くは手入れの簡単なステンレス製などに代わってきていますが、衛生的な環境を大切にしたい医療現場だからこそ、抗菌効果のある銅をもう一度見直してほしいものです。