院内感染対策に効果を発揮する銅

 病気の治療のために訪れた病院で、別の病気をうつされる。このような「院内感染」がいま、医療施設の信頼を揺るがすほどの問題になっています。

 徹底した院内感染対策が医療施設に求められるなか、日本銅センターでは院内感染の予防に銅の抗菌効果を役立てるという世界初の試みをスタートさせました。協力いただいたのは細菌学の権威・北里柴三郎博士の精神を受け継いで創設された北里大学病院。

 試験は皮膚科病棟内に銅板と黄銅板を設置し、そこから採取した細菌と、普通の床で採取した細菌を培養。コロニー(細菌の塊)の数を比べる方法で行われました。銅板や黄銅板を設置した箇所はベットの柵、洗面台、シャワーヘッド、ドアの押板、ドアノブ、手すり、処置室の床など。培養する菌の種類は、院内感染の主な原因となるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)を含む黄色ブドウ球菌、緑膿菌、大腸菌及び一般細菌です。

 病室の床に設置した銅板、黄銅板と普通の床から採取した菌の結果では、普通の床と比べ、銅板や黄銅板の床ではきわめてすぐれた抗菌効果をあげていることが分かりました。

  • 黄色ブドウ球菌:普通の床では菌が多数見られるが、銅板や黄銅板からはまったく検出されない
  • MRSA:普通の床とくらべ、銅板や黄銅板からは菌がまったく検出されない
  • 表皮ブドウ球菌:普通の床とくらべ、銅板や黄銅板のほうは菌がきわめて少ない
  • 一般細菌:普通の床にくらべ、銅板や黄銅板では菌のコロニー数が極端に少ない

 このような結果は、他の場所でも同様でした。また、洗面台やバスルームなどの湿った環境から検出される緑膿菌や大腸菌についても抗菌効果がえられることが確認されました。

 今回の試験について、このプロジェクトのリーダーである北里大学医学部・笹原武志先生は、これまでの成績から「銅や銅合金には院内感染の原因となる細菌を軽減し、衛生環境を改善させるはたらきがあると思われる」との見解を示されています。

 院内感染を防ぐために銅の抗菌性がどのように活かせるか。現在はこの試験結果をもとに、より具体的な方法が考えられています。それは、見た目の美しさに頼りすぎないでほしいということです。

 たとえば長年使われた銅の手すりは、経年変化などで一見汚く見えるかもしれません。しかし、実際は抗菌作用が働き、普通の手すりより衛生的な場合が多いのです。

 多くの方にこの理解が進めば、将来は医療施設のあちこちに銅が使われている、なんていう日がくるかもしれません。病院の衛生的な環境をつくるため、銅のチャレンジはいまも続いています。

院内感染の結果

この実験は動画として収録されています。ご希望の方はこちらをご覧下さい。
院内感染を銅で防ぐ

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