植物にも必要な銅

 私たちが酸素を吸って生きていけるのは、植物が光合成により酸素を吐き出してくれているからと、理科の時間に習いました。その基本的で大切な植物の光合成を、銅が支えているのをご存知でしょうか。

 銅は植物や動物の組織において、多くはたんぱく質と結びついていたり、あるいは酵素の主要な部分を占めるなどしています。

 酵素とは、植物や動物が必要な機能を発揮する際に必要となるものです。

 たとえば植物において、銅はプラストシアニンと呼ばれる酵素の成分です。この酵素は光合成にかかわる重要な役割を果たしています。ご存知のとおり、光合成は植物の生命にとって非常に大切な機能です。

 植物は、必要な銅を土からとっています。土壌や植物の種類によって変わりますが、植物が土から必要量の銅を摂取するためには、乾燥土壌中の濃度として7ppm程度の銅が含まれている必要があるといわれています。これよりも低い場合、一般的に銅欠乏症を起こします。

 とくに小麦などの穀物や、りんご、桃などの果実類などは、銅の欠乏に敏感です。

 世界において、どの土地でも銅の量が足りているとはかぎりません。国際銅研究協会(現 国際銅協会)が1984年に発表した調査結果によると、世界の多くの地域で銅が欠乏していました。世界の14か国(ヨーロッパを除く)のうち、約347百万ヘクタールは潜在的に銅欠乏の土壌であると推定し、このうち約70%はアメリカとオーストラリアが占めていると報告しています。

 植物に銅が足りていない状態だということを見つけるのは至難の技です。なぜなら亜鉛が少なかったり、モリブデンが多かったり、その他の微量栄養素の不足、過剰によっても同じような症状が出るからです。

 一般的には、銅が不足すると生長が悪くなったり、葉が縮れて黄色や白色になったり、根が発育不良となったり、種子が発芽しなかったり、病気や寄生虫に対する抵抗が弱くなったり、穀類の収穫量が低下するなどの症状が見られます。

 銅が不足している土地では対策として、土壌に銅を添加するという方法があります。イギリスのロンドン大学において行われた研究では、銅を多く含む肥料を与えたところ、大麦の収穫高が28.5%増加したことを明らかにしています。この研究から、ごく微量の銅の存在が穀粒の収穫に大きな影響を与えることがわかりました。

10円の周りにある菌は死滅しています
銅欠乏土壌の多い国(黒く塗りつぶされている地域)

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