下水処理場で活躍する銅

 東京都武蔵野市の善福寺池と三鷹市の井の頭池を水源とする神田川は、都心を東西に流れ東京ドームのある水道橋あたりで神田川本流と日本橋川に分かれ、いずれも隅田川に注いでいます。「お江戸日本橋七つ立ち・・・」の日本橋のかかるのが日本橋川。江戸時代、この神田川水系は、市民の貴重な上水として重宝されていました。高度成長をとげ、高層ビルがあちこちに並び始めるころになると、この川は見る影もなくなりました。強い臭気がただよい、川面にはプスプスとガスが立ち昇るほど。ひとたび大雨ともなると、もう大変。この水が周辺地域にあふれ出ます。

 この神田川がここ数年見違えるようにきれいになっています。魚の姿などまったく見られなかった川面には鯉のシルエット。桜の季節には水面に桜花を映し、少しずつ昔の面影を取り戻しているのがよくわかります。

 このように神田川をはじめ、多くの都市河川を蘇らせたのが下水処理事業の進展でした。生活や事業活動によって排出される汚水はそのまま川や海に流され、ひたすら汚染を進めてしまいました。これを一転させた一つの要因が近代的な下水処理場です。家庭や工場から排出される汚水や雨水などはマンホールを通って下水管に流れ込み、ポンプ所に送られます。ポンプ所では水中の木片やごみ、土砂を取り除いて再び下水管に送り出し下水処理場へと送られます。

 下水処理場のおもな仕組みは、まず入ってきた汚水を沈砂池に入れ、土砂と大きなごみを取り除きます。次に第一沈殿池をゆっくりと流し、有機質の細かい浮遊物は沈殿分離され、下水はばっ気槽に送られます。ここで活性汚泥(汚れを食べる微生物の入った泥)が加えられ、有機物は水や炭酸ガスに分解されます。繁殖した微生物はさらに細かい浮遊物を集めながら沈殿し、第二沈殿池に流れ込みます。ここで3~4時間かけてゆっくり流され、その間にばっ気槽でできた塊(フロック)は底に沈み、上澄みのきれいな水が越流ぜきを越えて水路に流れ込み、下水処理は完了します。汚れきって下水処理場に入ってきた水は約半日後澄みわたる水となって排出されていくのです。

 この下水処理場の防藻対策として銅板が使用され、その威力を発揮しています。先陣を切って採用したのは東京都大田区の東京都下水道局森ケ崎処理場。銅板が使用されたのは下水処理フローのうち第二沈殿池のきれいな水が流れ込む水路の部分。微量金属作用を利用した防藻対策としてコンクリート製トラフ水路を覆う形で銅板が張られました。藻の発生は下水処理能力を著しく低下させるため、その除去と付帯的な効果として蚊の産卵、発生、成長の抑制に大きな期待がかけられました。その効果はてきめんで、東京都では三河島、芝浦、新河岸など、他の処理場への使用も決めました。その後の東京都の調査によると

  • 銅板の防藻効果はそれまでのコンクリート素地などとくらべるととても高い
  • 銅板はメンテナンス性がよく、耐久性が見込めるので安価
  • 銅板からの銅イオン溶出量は基準値をはるかに下まわっていて安全

との報告がなされています。

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