10円硬貨は、人の手から手へと渡りますが、つねに無菌状態を保っています。実際に硬貨の細菌を調べる試験で、使いまわされている銅のコインはまったくの無菌状態であることがわかっています。実は銅には様々な細菌や微生物のはたらきを抑える力があるのです。
昔から「銅壺の水は腐らない」・「銅の洗面器は眼病によい」などといわれてきましたように、じつはかなり昔から銅の抗菌効果は知られており、私たちの暮らしに自然と生かされてきました。たとえば、障子やふすまの取手、ドアノブ、手すりなど、多くの人が手を触れる部分には銅や真鍮が多く使われています。
ではなぜ銅には細菌の活動を抑える力があるのでしょう。実は銅の表面には「微量金属作用」という殺菌作用が働き続けるからです。銅や黄銅がごくわずかな量で、驚くべき殺菌作用をもつことが解ったのは、明治26年のこと。スイスの植物学者フォン・ネーゲリーが、0.1ppmの濃度の銅イオンが藻類(あおみどろ)を死滅させることを発見したのがきっかけで、その後、微量金属作用の研究や応用が進んだのです。